東京で働きながら、地元や地方へのUターン転職を考え始めたとき、多くの方が最初に気になるのは「年収は下がるのだろうか」「今の生活水準を保てるのだろうか」ということではないでしょうか。
特に東京圏で働いている方は、求人票に書かれた年収だけを見ると、地方への転職に不安を感じやすいものです。都市部の方が給与水準が高いイメージがあり、地方へ戻ることを「収入を下げる選択」と捉えてしまうこともあります。
ただし、暮らしの豊かさは額面年収だけで決まるものではありません。家賃、食費、光熱費、通勤にかかる時間、子育てや家族との距離、将来の住まい方まで含めて考えると、東京から倉敷など地方へ移ることで、実質的なゆとりが増える可能性もあります。
年収の額面だけで判断しない
Uターン転職を考えるときは、まず「年収」と「生活に残るお金」を分けて考えることが大切です。年収が高くても、住居費や日々の支出が大きければ、自由に使えるお金は思ったほど残らないことがあります。反対に、年収の額面が少し下がったとしても、支出が大きく下がれば、家計全体では余裕が出る場合があります。
国土交通省が公表している「都道府県別の経済的豊かさ(可処分所得と基礎支出)」では、可処分所得から基礎支出を差し引いた金額をもとに、地域ごとの経済的豊かさを比較しています。ここでいう基礎支出には、食料費、家賃や持ち家の帰属家賃、光熱水道費が含まれます。
この資料では、東京都の可処分所得は全世帯平均で全国3位と高い一方、中央世帯で見ると12位まで下がります。さらに、中央世帯の基礎支出は東京都が全国で最も高く、可処分所得から基礎支出を差し引いた順位では42位となっています。収入が高い地域であっても、生活に必要な支出が大きければ、実質的なゆとりは小さくなるということです。
通勤時間も「見えにくいコスト」になる
もう一つ見落としやすいのが、通勤時間です。国土交通省の同資料では、経済的豊かさから「通勤の機会費用」を差し引いた比較も示されています。通勤の機会費用とは、通勤に使っている時間を費用換算したものです。
その結果、通勤の機会費用を差し引くと、東京都は47位、神奈川県は43位、千葉県は44位、大阪府は45位となっています。東京や大阪、神奈川などの大都市圏では、可処分所得だけを見ると高く見えても、家賃などの基礎支出や通勤時間を含めると、実質的な豊かさが低下する傾向があると読み取れます。
通勤時間は、給与明細には直接表れません。しかし、毎日の移動時間が短くなれば、睡眠、家族との時間、家事、学び直し、趣味、地域活動などに使える時間が増えます。Uターン転職では、収入の金額だけでなく「1日の使い方がどう変わるか」も大切な比較ポイントです。
データは「自分の条件」に置き換えて考える
国土交通省の資料では、岡山県は中央世帯の可処分所得から基礎支出を差し引いた順位で9位、そこから通勤の機会費用を差し引いた順位で10位とされています。東京都や大阪府、神奈川県などの大都市圏と比べると、支出や通勤時間を含めた実質的な豊かさが上位に位置していることが分かります。
もちろん、このデータは都道府県単位の比較であり、倉敷市内のすべての世帯やすべての仕事にそのまま当てはまるわけではありません。また、資料の対象は2人以上の勤労者世帯であり、単身世帯や自営業の方などは条件が異なります。そのため、資料の順位だけで「必ず得になる」と判断するのではなく、自分の家族構成、住まい方、働き方に置き換えて考えることが大切です。
たとえば、東京で賃貸住宅に住み、長時間通勤をしている方と、倉敷で実家近くに住み、車通勤で勤務先まで短時間で移動できる方では、同じ年収差でも感じ方が大きく変わります。毎月の固定費が下がる、通勤時間が短くなる、家族のサポートを受けやすくなるといった変化は、家計にも生活の満足度にも影響します。
倉敷での仕事選びは「収入」と「続けやすさ」を一緒に見る
Uターン転職では、初年度の年収だけでなく、長く働き続けられるかどうかも重要です。通勤距離が短くなることで体力的な負担が減る、家族の近くで暮らすことで急な用事に対応しやすくなる、地域のつながりを持ちながら働けるなど、数字に表れにくいメリットもあります。
一方で、仕事内容、給与体系、昇給制度、残業の実態、休日、転勤の有無などは、求人票だけでは分かりにくいこともあります。応募前に確認したい条件を整理し、必要に応じて相談窓口や現地で開催される転職イベントなどの機会を活用すると、入社後のミスマッチを減らしやすくなります。
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東京から倉敷へ移ると、何が変わる可能性があるか
倉敷へUターンする場合、職種や業界によっては、東京で働いていたときより額面年収が下がるケースもあります。特に、東京本社の大企業、外資系企業、専門性の高い職種などで働いている方は、求人票上の給与差を感じることがあるかもしれません。
一方で、住居費や通勤にかかる負担、家族の近くで暮らせる安心感、子育てや介護との両立など、生活全体で見るとプラスに働く要素もあります。倉敷市内や周辺地域で住まいを選ぶ場合、東京23区内や首都圏中心部と比べて、同じ支出で広さや駐車場、生活動線を確保しやすいこともあります。
また、倉敷周辺には製造、物流、医療・福祉、販売、事務、営業、専門職など、地域の産業に根ざした仕事があります。これまで東京で積み重ねてきた経験を、そのまま同じ業界で活かす方法もあれば、職種を軸にして別の業界へ展開する方法もあります。
確認したいポイント
Uターン転職を検討するときは、求人票の年収だけで判断せず、次のような項目を並べて確認してみましょう。
- 月々の手取り額と賞与の有無
- 家賃、住宅ローン、駐車場代など住まいに関する支出
- 通勤時間、通勤手段、車を持つ場合の維持費
- 保育、教育、介護など家族に関わる支出
- 休日数、残業時間、在宅勤務の可否など働き方
- 将来の昇給、資格取得、キャリアアップの見通し
比較するときは、東京での現在の生活費と、倉敷で暮らす場合の想定支出を月単位で書き出すのがおすすめです。年収が変わるかどうかだけでなく、「毎月いくら残るか」「時間の余裕がどれくらい増えるか」「家族や自分にとって大切なことに時間を使えるか」を見ていくと、判断しやすくなります。
「下がるかもしれない」だけで止まらない
東京から地方へUターンする際、年収が下がる可能性だけを見てしまうと、不安が大きくなります。しかし、国土交通省の資料が示すように、可処分所得、基礎支出、通勤時間を含めると、都市部の方が必ずしも経済的に豊かとは言い切れません。
大切なのは、「東京で働くこと」と「倉敷で暮らしながら働くこと」を、同じものさしで比べることです。額面年収、生活費、時間、家族、住まい、将来の働き方を合わせて考えることで、自分にとって納得できる選択が見えやすくなります。
Uターン転職は、単に働く場所を変えるだけではありません。暮らし方、家族との距離、将来の安心感を見直す機会でもあります。東京で得た経験を活かしながら、倉敷でどのような仕事と暮らしを実現したいのか、一度整理してみてはいかがでしょうか。
くらしき移住就労サポートデスクでは、倉敷市での暮らしや仕事探しについて相談を受け付けています。Uターン転職を具体的に考え始めた方、年収や働き方の比較で迷っている方は、お気軽にご相談ください。
参照元
- 国土交通省「都道府県別の経済的豊かさ(可処分所得と基礎支出)」
- 国土交通省「地方の『豊かさ』に関する参考資料」
- 中川豪「大都市依存症と貧困化現象-誰が格差を是正するのか-」『都市とガバナンス』Vol.43
